腸は「第2の脳」
これまで「単なる」栄養の消化・吸収機能を担う臓器として、どちらかというと地味な位置づけをされてきた「腸」。しかしながら、近年「腸脳相関」といった言葉に代表されるように、この腸の重要性が改めて注目されるようになっています。
腸はからだの中で最大の免疫器官であり、全身の免疫細胞の約7割が腸管に集まっています。また、腸は「第2の脳」ともいわれ、神経系への大きな影響力をもっており、メンタルの安定にも重要な役割を果たしていることが分かっています。したがって、日頃から腸の状態を整え、よい腸内環境を維持することは、健康的な日々を過ごすうえでとても重要です。
乱れた腸内環境(善玉菌が減少、悪玉菌が増加して腸内フローラのバランスが崩れた状態)は、生活の質(Quality of Life: QOL)に大きくネガティブな影響を与えてしまいます。
このような腸内環境の悪化による様々な体調不良は、通常の診察を受けてもその原因が特定されないことが多く、原因不明の症状にさらに頭を悩まされてしまう方がたくさんいらっしゃいます。このような症状は、過敏性腸症候群(IBS)として近年社会的にも大きな関心をよんでいます。
過敏性腸症候群(IBS)の主な症状
症状としては主に、腹痛、けいれん、下痢や便秘、腹部膨満感などがあり、一般的には男性よりも多くの女性がIBSを発症しやすいと言われています。
IBSの症状に悩む方も多くいらっしゃると思います。一人で悩まず、日常生活でできるIBSとの上手な付き合い方を実践し、症状を和らげましょう。
IBSとの上手な付き合い方
1. 食物トリガーを特定する食事日記をつけて、症状を引き起こす食物を特定しましょう。原因となる食物は人によって異なります。医師・管理栄養士などの経験豊富な専門家に相談して、食物トリガーを特定し、健康的なバランスが取れた食事を維持できるようにしましょう。
2. リラックスとマインドフルネス
日々のストレス管理方法を見つけましょう。リラックスとマインドフルネスがキーワード! ストレスはIBS症状を引き起こす可能性があります。ヨガ、太極拳や気功、毎日10分の瞑想、簡単な呼吸法、近所の散歩などといった、セルフケアを日常に取り入れてみてください。
3. 適度な運動をルーティーンに!
研究によると、身体的な活動を維持することがIBSの症状と生活の質改善に効果的であることが示されています。IBSに優しい運動には、サイクリング、水泳、ヨガ、ウォーキング、ハイキング、エアロビクス、太極拳や気功などがあります。マラソンのように激しい運動は下痢などの症状が悪化することがあるので、適度であることが大事です。
4. 目的にあったプロバイオティクスサプリメントを選ぶ
プロバイオティクス(生きた善玉菌)には様々な種類があり、そのはたらきもそれぞれ異なります。中でも乳酸菌
L.プランタラム 299vは、IBS関連の症状を和らげるということが臨床試験で明らかになっています。
5. 事前の計画と、頼れるサポートを
IBSの症状がある場合、ストレスがかかると腸がうまく機能しないため、トイレでリラックスできる時間を十分とることも重要です。慣れない環境ではトイレの場所を事前に把握してくことや、緊急時に備えて下着や着替えを用意しておくこと、ティッシュ類の備品を携帯することなど、事前の準備があれば安心です。また、周りのサポートもとっても大切。話しにくいと思うかもしれませんが、親しい友人、家族、または同僚に打ち明けることは大きなサポートになります。
日常生活に取り入れ、IBSと上手く付き合っていきましょう。
- https://www.jnmjournal.org/journal/view.html?doi=10.5056/jnm22037